本研究では、人文学領域、とりわけ英語のルールを学習する場面が取り上げられた。対象は、日本語を母語とする学習者である。今年度は、「第二言語のルール習得(英文法)場面」でみられる「母語に関連する素朴理論」の実態を明らかにすることを主目的とした。先の基盤的調査について、データの分析を行った。その結果、(1)英語での応答場面においては、母語に関連する素朴理論に影響された誤応答が見られることが、大学生を対象として再確認された。また、(2)学習者自身が自らの問題として振る舞うことが可能な状況ならば、素朴理論からの影響が低減させられることも示唆された。これらの分析結果を基にして、第二言語である英語での応答場面において、母語からの干渉に関する素朴理論を修正し、ルールに基づいた正応答を形成するためには、どのような教授原則が有効かを確かめる目的で、新たに実験を行った。実験群では、英語の応答ルールと複数事例の提示に加え、「予想活動」と「理由説明文」を付加した教授を行った。統制群では、ルールと複数事例の提示のみであった。分析対象者は、大学生であった。現時点までの分析結果から(3)実験群の方が統制群に比べて、素朴理論を修正して一貫正応答を形成することに正の方向で一定の影響を及ぼすことが示唆されている。さらに実験結果の分析をすすめ、(4)素朴理論が修正されてルールに基づいた課題解決がさなれた場合の「思考プロセスモデル」を提案していくことが、今後の課題として残された。
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