研究概要 |
本研究では, 人文学領域, とりわけ英語のルール(語用論的ルール)を学習する場面が取り上げられた。対象は, 日本語を母語とする学習者である。今年度は, 1. 昨年度の研究で実態が明らかにされた「母語に関連する素朴理論」からの干渉を, 効果的に抑制するための教授要因を探求すること2. 素朴理論が抑制されてルールに基づいた課題解決が正しくなされる場合の「認知プロセスモデル」を構築することを主目的とした。大学生を対象とした実験とその考察に基づき, (1)英語のルールと複数事例の提示に加え, 「予想活動」及び「理由説明文」を取り入れた援助法が, 母語に関連する素朴理論からの干渉を抑制し, ルールに一貫して基づいた課題解決を促進する効果のあることが示された。 さらに, (2)ルールを適用し正しく課題解決ができた場合には, 7つの過程を経て正応答が導出されるという認知プロセスモデルが提案された。次に, 短期大学生を対象とした調査に基づき, (3)ルール適用者や母語干渉型素朴理論保持者のタイプの存在が確認され, 先に提案された認知プロセスモデルが, 一定の妥当性を有することが示唆された。さらに今年度の実験をふまえ, さらなる課題点のひとつとして, (4)ルールに基づいた正応答の産出が可能になったからといっても, すぐに発展的課題には正答できるようにはならなかった結果をふまえ, 今回の実験ほどは条件を著しく変えないような新課題を設定し直した場合は, ルールが応用できる程度がどう変化するのかを検証することが, 挙げられた。
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