研究概要 |
本年度は前年度に取得した小学生の読みの眼球運動の解析を引き続き行った。また、テキストの表記方法が読み理解に与える影響に関する発達的検討の一環として、テキストを文節ごとに分かち書きした文章、分かち書きを行わない文章、テキストにランダムに空白が挟まれる文章という3種類文章を小学校2年生および4年生の児童と成人に読んでもらう実験を行った。その際、読み手の眼球運動を測定して1ページあたりの読み時間や停留時間、停留位置等から読みやすさを評価した。現在、取得したデータを解析中である。全体的な傾向として、成人は分かち書きの促進効果(分かち書きありの文章が分かち書きなしの文章と比較して読み時間が短くなることと定義)が見られないが、児童には読みの促進効果の傾向が見られる。また、ランダムに空白をはさんだ文章を読む場合には小学校児童と成人の両者で効率的な読みが妨害される傾向が見られている。今後は小学校2年生と4年生に分けてデータを詳細に解析することにより、小学生の間にどのような変化が見られるのかを明らかにする予定である。 さらに眼球運動データの解析を進めて発達とともに読書中の情報処理過程がどのように変化するのかを明らかにできると考えられる。また、発展途上にある児童の読み理解を表記の仕方によって促進させることができるかを考察する。このような検討は読みの発達に関する基礎的知見を提供するだけでなく,読みの支援方法への応用が可能であると考えられる。
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