研究概要 |
本研究課題の二年度として,本研究課題の軸となる防衛的悲観主義尺度の妥当性および信頼性を向上させる研究を実行した。具体的には,荒木(2008)の作成した学業達成場面の防衛的悲観主義尺度(JDPI)を用いて,全回答者をJDPIの下位尺度の組み合わせによって認知的対処方略の異なるパターンに分類し,そしてそれらの認知的対処方略のパターンの違いによって帰属スタイルに差があるかどうかについて検討した。日本人大学生220名を対象に調査を実施し,JDPIと併せて,成田・佐藤(2005)の領域別帰属スタイル尺度について回答してもらった。得られたデータに関して,統計パッケージSPSS14.0および'AMOS5.0を用いてより統合的かつ詳細な分析を行った。その結果,JDPIの因子構造は荒木(2008)の結果と同じ4因子構造となった。また全回答者に対してグループ内平均連結法によるクラスタ分析をおこなった結果,JDPIの下位尺度の組み合わせによって認知的対処方略の異なるパターンが3つ抽出され,荒木(2008)における下位尺度得点の組み合わせと一致した。これらの結果から,JDPIの高い内的一貫性および再検査信頼性が認められた。また,方略的楽観主義者および真の悲観主義者群は失敗の原因をより内的に帰属する傾向がうかがえた。本研究で用いた領域別帰属スタイル尺度では,ネガティブな原因帰属についての帰属スタイルのみ査定されたことから,今後は成功などポジティブな出来事の原因帰属過程についても検討する必要がある。この研究結果については,北陸心理学会第44回大会において「防衛的悲観主義者の帰属スタイルに関する検討」という題目で口頭発表をおこなって報告し,北陸心理学会第44回大会発表論文集の35~36頁において発表論文が掲載された。また,図書の執筆として,「心・理・学」(松川順子(編)ナカニシヤ出版)の分担執筆「第11章燃え尽き症候群と学習性無力感-臨床心理学」,p.182-194.)を担当し,防衛的悲観主義概念の概説をおこなった。
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