研究概要 |
日本人大学生を対象に学業達成場面における防衛的悲観主義を査定する尺度を用いて実験および調査研究を実施し,日本人における防衛的悲観主義のメカニズムを解明する知見を蓄積した。具体的には、Norem&Illingworth(1993)と同様の手続きを採用して集団形式で実験をおこない、防衛的悲観主義の実験パラダイムの妥当性について検討をおこなった。国立大学に所属する大学生195名を対象に、荒木(2008)の作成した防衛的悲観主義尺度、防衛的悲観主義の受容度、多次元的完全主義認知尺度、状態不安尺度、PANASへの回答をした後、対処方略の操作をおこない、算数問題を実施した。方略的楽観主義群および防衛的悲観主義群における算数課題の遂行成績について分散分析をおこなった結果、有意な主効果や交互作用はいずれもみられなかった。Norem & Illingworth(1993)の追試は失敗したことから、防衛的悲観主義の実験パラダイムにおいて採用されている算数問題は認知的対処方略を扱う課題としては不適当である可能性が示唆された。防衛的悲観主義という認知的対処方略を発揮できるような実験課題を開発することが今後必要である。また、防衛的悲観主義群は、方略的楽観主義群と比べると、状態不安が高いこと、ネガティブ感情が強いこと、ポジティブ感情が弱いことが示された。 この研究結果については,富山大学で開催された北陸心理学会第46回大会において「集団実験による防衛的悲観主義の検討」という題目で口頭発表をおこなって報告し,北陸心理学会第46回大会発表論文集の20~21頁において発表論文が掲載された。また,過年度実施した実験研究の成果については,「学習性無力感パラダイムを用いた防衛的悲観主義に関する実験的検討」という表題で健康心理学研究という学術雑誌に掲載される予定である。
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