研究概要 |
心配は多くの臨床的問題で見られるが介入成績は芳しくない. 心配が病理化する要因の一つとして(身体的な)情動の回避が指摘されているが, 研究は手薄である. 本研究では, 身体に受容的な注意を向ける介入法(マインドフルネス瞑想)によって, 心配への介入効果が向上するかどうかを検討する. そのために, (1)心配の増強要因としての情動回避傾向の測定, (2)マインドフルネス瞑想の心配低減効果の検討, (3)情動回避傾向の低減が介入効果を媒介しているかどうかの検討, を行う. 平成20年度は, 介入の前提として, 情動回避モデルを検証する調査研究を行った. 1. 心配性傾向に対する予測力の比較 : 心配を予測する変数は多数あるため, 新しい構成概念はそれらとの相対的な予測力を明らかにする必要がある. 情動回避傾向は, 問題解決への固執, 制御困難性の過大視といった先行研究で高い予測力が示されている変数で説明出来ない心配の分散を説明出来ることが見いだされた(増分妥当性). 2. 全般性不安障害の症状に対する予測力 : 従属変数を臨床的な全般性不安障害の症状(平成19年度に作成されたGAD-Q)とした場合も, 情動回避傾向の増分妥当性が確認された. 特に, 心配の病理性に対する予測力が高かった. このように, 身体情動の回避傾向は心配や全般性不安障害症状の形成に重要な役割を果たすことが分かった. よって身体情動の回避にターゲットを絞った介入は, 心配の低減に有効であると期待出来る. 3. 理論的研究昨年度に引き続き, 心配や心理療法の作用メカニズムに関する理論的考察をまとめた. その成果は感情心理学研究, 著書(パーソナリティと臨床の心理学)や各種学会で発表した.
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