研究概要 |
本研究の目的は,(1)心配の増強要因としての情動回避の役割を検討すること,(2)情動回避を低減する方法としてのマインドフルネス瞑想の効果を検証すること,であった。平成21年度は,(3)の目的のため介入研究に着手した。 1. マインドフルネス瞑想と注意訓練の比較:マインドフルネス瞑想を,身体への注意を含まない注意訓練と比較することで,身体に注意を向けることの効果を探った(増分妥当性)。その結果,心配低減効果は両者で同様であった。しかし,情動回避傾向を低減する効果は,むしろ身体への注意を含まない注意訓練でみられた(日本心理学会第73回大会)。 2. 治療の根拠の説明の効果:同じマインドフルネス瞑想を実施するときも,それがどのように奏功するかの説明が異なると治療効果が変化する可能性がある。マインドフルネス瞑想を何のためにするのかについて,注意の向上のような認知的変化を強調する群,情動への直面化(情動を回避しないこと)を強調する群,特に説明を与えない群を比較した。その結果,いくつかの指標において,感情への直面を強調する群が認知的変化を強調された群よりも効果的であることが示された。このように,身体に注意を向けること,情動に直面化する効果について必ずしも一貫した結果が得られていない。今後は追試を重ね,結果を調整する要因を検討する。 3. 理論的研究・調査研究 昨年度に引き続き,心配やマインドフルネス瞑想の作用メカニズムに関する理論的考察をまとめた。その成果は著書(よくわかる認知科学,アナログ研究の方法)や各種学会で発表した。また,引き続き調査研究の結果の発表を行った(第35回日本行動療法学会・第9回日本認知療法学会)。
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