研究概要 |
本研究の目的は,(1)心配の増強要因としての情動回避の役割を検討すること,(2)情動回避を低減する方法としてのマインドフルネス瞑想の効果を検証すること,であった。平成22年度は,前年度に引き続き,(2)の目的のため介入研究を行った。 1.マインドフルネス瞑想の効果を媒介する要因:マインドフルネス瞑想の過程でどのような要因が変化するかを検討した。その結果,マインドフルネス瞑想によって情動回避のある側面(情動への恐れ)は減少するが,変わらない側面(アクセプタンス)もあることが分かった(認知療法研究)。 2.調査研究の発展:介入研究の結果から,「マインドフルネス瞑想は身体に注意を向けるために,情動回避の低減により効果的である」という仮説に対して必ずしも明確な支持がえられていない。そのため,調査研究を続行して,理論的な再検討を行った。その結果,心配と社交不安では関与する情動制御の問題が異なること(第36回日本行動療法学会),心配性に対する予測力が高いのは数ある情動回避関連の変数の中でも,制御に対する不全感であることが明らかになった(投稿準備中)。 3.理論的研究と臨床応用昨年度に引き続き,マインドフルネス瞑想に関する理論的考察をまとめた。その成果は著書(「感情と思考の科学事典」朝倉書店,「記憶と日常」北大路書房)や各種学会で発表した。また,えられた知見を臨床場面にフィードバックするため,臨床家を対象としたワークショップを実施した。
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