本年度は、肺癌患者を対象として、日常の身体活動が心理的適応・QOLへ及ぼす影響について検討するために研究を行った。比較的全身状態の良好である肺がん患者を対象とした前向き観察研究を実施した。研究参加への同意が得られた12名を対象とし、調査は約3ヶ月行われた。研究は、ベースラインにおける抑うつ・不安・QOLなどの心理的状態の測定を行った後、身体活動の指標としてライフコーダーを実際に対象者に装着を依頼した。入院前・術後(退院前)・退院後1回目外来・退院後2回目外来に各心理尺度を実施し、その間、ライフコーダーにより身体活動量を測定した。対象者は男性9名・女性3名、平均年齢は63.3歳であった。12名の対象者の内、研究を完了した6名のデータを分析対象とした。その結果、平均身体活動量(歩数)は、入院前の期間が8894.47歩、入院日から手術日までの期間が5807. 93歩、手術日から退院日までの期間が2780.32歩、退院日から1回目外来日までの期間が3662. 14歩、1回目外来日から2回目外来日までの期間が5226. 74歩であった。心理的適応とQOLについては、入院前は、抑うつ・不安尺度のHADSの抑うつは平均3.83点、不安は平均7.5点、QOLを測定するEORTC-QLQ-C30日本語版の全般的QOLは平均66.67点であった。術後(退院前)はHADSの抑うつは平均3.17点、不安は平均4.5点、EORTC-QLQ-C30日本語版の全般的QOLは平均58.33点であった。2回目外来はHADSの抑うつは平均5.33点、不安は平均5.5点、EORTC-QLQ-C30日本語版の全般的QOLは平均65点であった。 来年度は引き続き症例の蓄積と詳細な分析を行う。その結果に基づいて、肺がん患者の日常の身体活動量をターゲットとしたQOL向上のためのプログラムの開発を行い、その実行可能性と有効性の検討を行う。
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