研究概要 |
(1) 手術後の肺癌患者の心理的適応支援のための介入方法の開発 術後肺癌患者の日常の身体活動が心理的適応・QOLへ及ぼす影響の検討を行うため、前向き観察研究を行った。参加者は20名、調査は入院前から退院約6週目までの約3ヶ月行われ、その間、計4回の各心理尺度と日々の身体活動量の測定を行った。研究を完了した15名の内、身体活動量が外れ値を示した1名を除外した14名を分析対象とした(平均年齢65.0歳)。その結果、平均身体活動量は入院前が最も高く、手術後が低い一方、退院6週後には入院前の約7割まで身体活動量が回復することが示された。退院後の平均歩行数と退院6週目の不安・抑うつ得点には中程度の負の相関関係があり(r=-.44,-47)、退院後の歩行数が多い人ほど、不安・抑うつ症状が少ないと報告することが示された。 この結果を基に、手術後の患者の身体活動量の増加を目的とした行動療法的介入の開発を行った。プログラムは、問題解決療法の技法を参考に、心理教育、目標設定、活動リストの産出、セルフモニタリングから構成され、退院約2週目に行った。調査期間等は先の研究と同様であった。実行可能性及び有効性の検討を行うため、現在までに9症例に対してプログラムを実施した。症例の蓄積中であるため、詳細なデータ分析は行っていないが、参加者からは介入に対し概ね高い満足が得られた。 (2) 手術後乳癌患者の心理学的支援方法の開発 問題解決療法の枠組みを参考とした心理学的な介入法の開発に向けて、乳癌患者の心配事の評価を行った。112名の術後乳癌患者を対象に、心配評価尺度を実施した結果、癌患者は大きく分けて「将来に対する心配」「身体に関する心配」「対人関係に関する心配」の3つに分けられることが明らかとなった。この結果を基に、現在開発中の介入プログラムで、患者の心配事のアセスメントに用いるワークシートが開発された。
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