研究概要 |
本年度は、児童の不安障害に対する認知行動療法プログラムの有効性の検討を行った。まず, 新聞広告等を利用し, プログラムの開催について, 公示した。次に, 問い合わせのあった参加者について, 電話による簡単なスクリーニング調査を経て, Anxiety Disorders Interview Schedule for DSM-IV(ADIS : Silverman & Albano, 1996)による半構造化面接を行った。その結果, 児童の不安障害の診断基準に合致した12名を対象とした。 集団認知行動療法プロラム(いっちゃが教室)は, 前年度の成果を参考に開発され, 全8回, 週に1回実施され, 約2ヶ月間行った。集団形式で行われ, 1つのグループの人数は, 5名程度とし, 学年, 性別を考慮し, グループを構成した。 分析の結果, プログラム終了後, および1ヶ月と3ヶ月フォローアップ時点においてスペンス児童用不安尺度(Spence, 1998 ; Ishiakwa et al., 2009)で測定される自己評定の不安症状の有意な改善がみられた。加えて, 親評定による不安症状についても有意な改善がみられた。また, プログラム参加児童の9名(75%)が不安障害の診断基準から外れることも示された。同レベルの不安症状を示すマッチングサンプルとの比較の結果, プログラム参加児童はプログラム終了時点での不安症状の得点が有意に低いことが示された。同様に, 認知の誤りやネガティブ自己陳述においても改善が確認された。一方, 抑うつ得点については, 時期による変化はみられたが, 群間差はみられなかった, 以上の結果から, 児童の不安障害に対する短期集団認知行動療法プログラムの適用可能性と有効性が示唆された。
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