本研究では、コンサルテーション技法を含むカウンセラー養成プログラムを作成することを目的とした。行った研究は大きく3つにわけることができる。第一に、コンサルテーションに関する国内外のレビューを行った。その結果、[○!1]我が国においてはコンサルテーションに必要な技法や姿勢について体系化された方法論が存在せず、それらについての一致した見解も見当たらないこと、[○!2]コンサルテーション技法を含むトレーニングプログラムについても開発がなされていないこと、[○!3][○!1][○!2]の問題点を受けて、コンサルテーションの指導そのものも決して十分ではないこと、[○!4]一方米国においてはコンサルテーションの意義が早くから注目され、体系的な理論や技法の構築、体系化された理論に基づくトレーニングの実践などがすでに行われていること、[○!5]コンサルテーション研究がわが国にも急がれることの5点が確認された。これらの問題を受け、第二に、国内外の資料の分析と、コンサルティとなる教員とコンサルタントとなる心理士へインタビュー調査を行い、コンサルタントに必要な資質や技法、視点について整理を行った。その結果、大きく6つの視点([○!1]1対1のカウンセリングを行うことのできる技量、[○!2]組織を眺め、それぞれの相互作用の影響を考えながら、各リソースを十分に有効活用できる力(組織的な視点)、[○!3]短時間でも問題解決の方法まで提供できる迅速さなど)が挙げられた。第三に、この6つの視点を元に、養成プログラムの作成を試みた。さらに、養成プログラムを用いて、心理士へのスーパービジョンと学生対象のトレーニングを実施したところ、本プログラムが有効である可能性が示唆された。本研究におけるレビューで明らかにされたように、我が国でのコンサルテーションに関する研究は取り上げるべき課題が数多くあり、新米心理士たちも手探りの状態でコンサルテーション業務を行っている。一方、学校現場のSC に対する期待は大きく、その中でも効果的なコンサルテーションを行える技量を強く求められている。このことは、コンサルテーションの意義が現場でも高く評価されている現れであるとも言えよう。本研究でなされた試みとその成果は、大変意義のあるものではないかと考えられる。今後、本研究で作成された養成プログラムを実証的に検証することで、より精査を行っていく必要があることが課題として残されている。
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