研究概要 |
心理臨床領域において行動分析学による知見が様々な形で応用されるようになってきた。その1つに、Acceptance and Commitment Therapy(ACT; Hayesら,1999)がある。本研究では、コールドプレッサー課題を用いアクセプタンスの技法として提案している手法の効果を検証することを目的としている。言語の影響を低め調整を図る方法として、例えば、課題に対する判断までの時間を短縮することにより関係枠の影響を低減しようとする試みもあるが、ACTではエクササイズやメタファーを多彩に用いている点で特徴的である。これまで単なる実験者からの教示文をもちいて研究を行ってきたが、本年度はワークショップ形式によってACTの推奨するメタファーやエクササイズを再検討することを目的とした。このワークショップでは、昨年度まとめたACTに関するガイドラインと既製のワークブックを用いながら、ACTの推奨する6つの構成要素を取り上げることとした。また、このワークショップは初学者を対象とし、二日間の日程で行うこととした。なお、このワークショップの効果として、ACTに関する知識、態度、痛み耐性とうにどう影響を与えるか、測定することとした。この一連の研究は、目白大学内の倫理審査を申請し、承認を得ている(平成19年6月26日付通知)。結果、ACTの知識や、状態不安は有意な増加が認められたが、態度や痛みの耐性には有意な変化は見られなかった。一方、痛みに対する主観的評価は有意な変化が認められた。これらの結果から、行動への影響が直ちに起こるものではなく、知識や状態不安、痛みに対する主観的評価が変化したのちに、実際の行動の変化が促されることが推測された。
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