研究概要 |
全5回の本プログラムに4回以上参加し,実施前後の調査で有効回答の得られた中学生の母親計9-10名を分析対象とした。 プログラム実施前後における各変数の尺度得点の変化 各尺度得点を用いてt検定を行った。その結果,家庭ストレッサーの"不承認",養育スキルの"一貫性のないしつけ"と"体罰"で有意差,ストレス反応の"抑うつ・不安"と"無気力"でそれぞれ有意傾向が示され,いずれもプログラム後の得点が低かった。一方,養育スキルの"関与"と子どもからのサポート期待では有意な得点の上昇が認められた。すなわち,プログラム後には"子どもの話を聞かない"等のストレッサーを子どもに与える頻度,あるいは一貫性のないかかわり方や罰を与えるしっけ方が減少し,子どもと一緒に冗談や学校のことを話す等のかかわりが増加したと考えられる。また,母親の抑うつ感情や無気力感が軽減し,子どもが援助してくれるという期待感が高まったといえよう。 プログラム実施による親のかかわり行動の変化 子どもに対するかかわり行動の変化を検討するため,セルフ・モニタリング記録に記載された母親のかかわり行動を肯定的行動,否定的行動,中性的行動の3種類に分類した。各行動の平均出現数を1週間単位で算出したところ,プログラム開始日から1週間後までは3種類の行動を同程度行っていたが,プログラムの進行(2-4週目)に伴い,肯定的行動は維持あるいは増加の傾向にあり,否定的行動と中性的行動は減少した。 以上から,本プログラムによって,母親の子どもに対する不適切な接し方が減少し,適切な接し方が増加することが示唆された。また,母親自身のストレス反応を軽減する可能性も考えられる。
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