本研究の目的は、致死的不整脈の有効な治療法である植込み型除細動器を利用する患者(以下ICD患者と略記)の心理的な不安や緊張状態の緩和による不整脈発作頻度の軽減を目指すものである。具体的な手順として(1)ICD患者の不安障害・気分障害の出現と維持にかかわる要因をプロスペクティブに追い、不整脈発生およびICDの電気的作動と不安との関連を明らかにし、(2)ICD作動への不安からQOLが低下している患者に対し、不安の軽減に焦点を当てた認知行動療法に基づく心理教育プログラムを実施する。 本年度はプロスペクティブ研究に用いる質問紙を確定し、研究を継続的に実施するためのプロトコル作成を行い、院内に設置された倫理委員会に研究実施の申請を行った。また、ICD頻回作動により入院し、作動への不安から行動拡大に大きな制限が見られた患者をモデルケースとして、認知行動療法をもちいた介入を循環器内科病棟で行い、その効果について医療チームで検討を行った。この介入により、認知行動療法で用いられる不安対象への段階的暴露と脱感作、リラクセーションの技法によって、ICD患者の作動に対する不安とそれに伴う回避行動の緩和が可能であることが確認された。また、実際のケースを通すことで循環器内科医および看護師の認知行動療法の理論や実際の実施法、効果、患者への関わり方についての理解が促進された。 来年度はこの介入で得た経験をもとにICD患者に対する認知行動療法プログラムを構成するとともに、新規植込み患者のプロスペクティブ調査を継続する。
|