不整脈は不安や緊張などの情動によっても喚起される。本研究の目的は、致死的不整脈に対して有効な治療法である植込み型除細動器(implantable cardioverter defibrillator)を用いた治療を行っている患者(以下ICD患者と略記)の心理的な不安や緊張状態の緩和を図り、それによって不整脈発作頻度の軽減を目指すものである。具体的な研究手順として(1)ICD患者の不安障害・気分障害の出現と維持にかかわる要因をプロスペクティブに追い、不整脈発生およびICDの電気的作動と不安との関連を明らかにし、(2)ICD作動への不安からQObが低下している患者に対し、不安の軽減に焦点を当てた認知行動療法に基づく心理教育プログラムを実施する予定である。 本年度は前年度に引き続き、ICDの新規植対込み症例のプロスペクティブ研究への導入を行っている。現在10例がエントリーとなっており、退院後半年〜1年のフォローアップ調査を継続中である。また、ICD頻回作動を契機に自宅での生活に対する不安が強まった患者をモデルケースとして、退院準備から自宅での生活の安定を目指して認知行動療法を用いた介入を行った。この症例ではリラクセーションや思考の転換など複数の対処法の獲得により退院に対する不安が解消され、その後自宅でICD作動が生じた後も患者自身が自律的な対処行動をとることで、不安が維持されることなく日常生活を継続できるようになった。 来年度は新規植込み患者のプロスペクティブ調査を継続し、ICD患者に対する認知行動療法プログラムを構成・整備する予定である。
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