研究概要 |
平成19年度は,青年の聴くスキルの内容にはどのようなものがあり,どのような構造を有するのかについて,幅広い対象に調査することで明らかにすることを目指した。複数の大学の全学年を対象に,聴くスキルに該当する行動の特徴を尋ね,聴くスキルに該当する項目の整理を行った。その結果,青年の友人関係適応や学校適応などに有効に働く,聴くスキルの具体行動の構造について理解することが出来た。 次に,採集された具体的行動例をもとに作成した質問紙による調査を行い,因子分析などの分析を用いて聴くスキル尺度の作成を行った。その結果,雰囲気作り,共感,アドバイス,表情読解,関心,目を見る,相槌,自然体の8因子からなる聴くスキル尺度を作成した。 作成された聴くスキル尺度を使用して,対人適応との関連を検討した。その結果,聴くスキルは友人関係満足や仲間への積極性との関連がみられ,また,聴くスキルの形成にはさまざまな生育環境が影響することの可能性が示唆された。 次に,聴くスキルの実行を可能とする性格特性や認知的特徴にはどのようなものがあるのかの検討を行った。みいだされた性格特性は,多くは主張するスキルに有効なものであったが,聴くスキルにのみ有効に働く性格特性も存在した。認知的特徴は,聴くスキルに特徴的なものがみいだされた。 上記の検討を統合して,8つの聴くスキルの下位尺度ごとに,青年が主に自分自身で工夫することを通じて,聴くスキルの向上を目指すことが出来る,青年の自発性に着目したトレーニングプログラムの作成を行った。
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