本年度は「攻撃性を示す状況における『活性化された表象モデル』についての検討」を目的としていた。近年、愛着研究においては物語を利用しての表象測定が注目されており、「どのような内容」の物語が「どのように」語られるかという点から表象が測定されている。本研究でもそれにならいながら「親密な関係における攻撃性の示される場面」での表象を把握するための測度を作成することがその主な作業であった。予備調査として(1)「親密な関係における攻撃性の示される場面」の選択を行い、(2)物語を作成してもらい、(3)妥当性の検証のために愛着スタイルの測度、およびP-Fスタディを実施した。現在(2)において作成してもらった物語の分析のためのコーディング指標を作成しているところであるが、まだ期待した水準までの成果は得られていない。ここで改めて文献を読み直したところ、物語を利用しての表象測定においては、通常3〜4に分類される愛着パターンを適切に分類することについて、一貫した成果を見いだせていないこと、また、そのコーディング指標は多くが公開されていないこと、などの問題があり、さらにより簡便な表象測定の方法として、刺激語を提示し、それによって作成される物語(スクリプト)を用いた方法が新しく提案されており、この方法は攻撃性研究においても利用されているようである。そこで、現在コーディング指標の見直しを進めながら、新たにこのスクリプトの利用を模索しているところである。
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