研究概要 |
高齢者を対象とした短期心理支援法の開発のため, 面接調査を実施した. 手続きとして, まずは面接協力者を募るため地域在住高齢者を対象に無作為抽出をして, 面接調査協力依頼書を送付した. そのうち6名が面接調査の対象となった. 方法は, 週1回90分を, 3回行い, グループで実施した. テーマは, 1回目「過去のこと」, 2回目「現在のこと」, 3回目「未来のこと」を思いつくままに話してもらうこととした. グループで行ったのは, 参加者同士で, 話をしたり, 聴くなかで, 自己理解のみならず他者理解が進むことや互いに共感しあうことがねらいである. 調査者は, 参加者の話した言葉のなかで, 過去の後悔や今は昔に比べて出来なくなったことが話されたときに, 「でも, ○○は頑張ってこられたようですね」や「でも, 今は, ○○は頑張ってやっておられるようです」と, 過去の体験のなかで実際に意欲的に, 生きがいを持って行ってきたにもかかわらず, それを参加者が忘れていたり, 肯定的に捉えきれていないことを取り上げて言語化していった.そうするとそのうち, 参加者自身が他者の語りに対してそのような役割を果たすようになった. 客観的指標としては, 主観的幸福感, 抑うつ感, 自己概念の測定を, グループ開始前(1回目前), 終了後(3回目後), フォローアップ時(グループ終了後1ヵ月後)で比較した. 統計的検定は, 次年度, 同様の計画で被験者数を増やした後, 行う予定であるが, グループのなかで何度も出てきた話題としては「みんなで話すのはとても意味や価値がある」, 「せっかく, みんなで知り合いになったのだから, この縁を引き続き持ち続けたい」というものであった. このようなグループの凝集性が引き出されたのは, 調査者の関わり方を, 高齢者自身も担い, 互いに気づきを促したためと考えられる.
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