本研究は、実験的-フィールド研究モデルに基づいて、日常生活場面での個人の健康関連行動や健康状態がストレス場面にどのような影響を及ぼすかについて明らかにすることを目的とした。本年度は、大学生を対象にBDIを実施し、健康状態の良い個人と良くない個人を抽出し、実験室でのストレス実験を行った。また、主観的幸福感についても同様の研究を実施し、以下のような知見を得た。 1 : 実験的-フィールド研究の実施(健康状状態の影響) 健康な大学生を対象にBDIを実施し、高抑うつ群と健常群を被験者として選抜した。実験は、10分間の順応期後、9分間のメンタルストレステストを施行し、10分間の回復期にて実施した。free-MHPGでは、高抑うつ群は課題期に上昇し回復期で基準値に戻ったが、健常群では有意な変化が認められなかった。s-IgAでは、健常群に比較して高抑うつ群は常に低値を示した。以上の結果から、抑うつ者は、日常生活場面でのストレス状況下でも、強い心理的負荷を感じ、脳内の中枢神経に強く影響することが示唆される。 2 : 実験的-フィールド研究の実施(主観的幸福感の影響) 大学生を対象にWHO-SUBIを実施し、心の健康度のカットオフを基準として、同意の得られた主観的幸福感の高い個人と低い個人を実験の対象者として選抜し、研究1と同様の手続きで実験を行った。コルチゾールでは、主観的幸福感の高い個人は低い個人に比較して、セッション中常に低かった。これら知見から、主観的幸福感の低い個人に比較して高い個人は、スピーチ課題を強いストレスと認知していない可能性が考えられる。コルチゾールを従属変数とした重回帰分析を行ったところ、緊張覚醒との関連性が認められた。つまり、コルチゾール反応と主観的ストレス反応との生態学的妥当性が検証された。
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