本研究は、小学校5年生、6年生、中学校1年生、2年生、3年生の5学年を対象に、質問紙調査を用いて3年間の縦断調査行い、中学校で生徒指導上、特に問題となる非行行動の発生の予測要因を小学校の変数から明らかにすることを目的としている。平成19年度に縦断調査を開始し、平成21年度は、中学生5校約2000名、小学生8校約1200名を対象に、縦断調査第3回目を行った。調査の内容は、外面的な問題行動(非行傾向、学校での問題行動など)の経験の有無と、内面的な問題(抑うつ)、身体の発達、生活リズム(起床、就寝時間、テレビ等の視聴時間、携帯電話の使用時間)、重要な他者(家族、友人、教師)との関係、個人の特性(共感性、セルフコントロール等)、学校適応である。今年度で、小学校から中学校移行期を含む3年間の縦断データが揃い、小学校から中学校に移行期の問題行動の変化、小学校の要因から中学校での問題行動の予測要因を明らかにすることが出来る。今年度の分析結果からは以下のことが明らかになった。問題行動は、抑うつのように中学校段階で増加するもの、小学校段階でも問題がみられ一度減少し中学校段階で再び増加するもの、また中学校段階で減少するものがある。問題行動と生活リズムとの関連では、親への暴力は小学校段階においても睡眠時間の短さが関連していたが、中学校段階になると、小学校と比較して、問題行動の経験の有無によって睡眠時間の長さに差がみられるものがより多くなる。抑うつや、万引き、親への暴力といった問題の意味あいが強いものがある子どもの睡眠時間が短く、問題行動の深刻さと生活リズムの乱れの関連があること。非行や問題行動と関連している要因が明らかになることで、リスクの高い子どもに対し早期の介入が可能になる。また、生活指導面等の学校現場での実践に活かすことができるといえる。
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