本研究の日的は対人援助サービス従事者(以下「従事者」とする)の職業生活出来事と精神的健康との関連を検証することである。平成20年度は平成19年度に作成した「職業生活出来事チェックリスト」を用いて従事者が体験する職業生活出来事と精神的健康との関連について検証することであった。その結果、特に以下の2点が明らかになった。(1)従事者の精神的健康維持のためには、彼らの職業生活において特に「職員間の関係」と「自分の仕事に対する役割」に関連する出来事に着目する必要がある。具体的にはポジティブな「職員間の関係」と「自分の仕事に対する役割」に関連した出来事を、従事者がより多く体験できるようにする職場での取り組みが、またネガティブな「職員間の関係」と「自分の仕事に対する役割」に関連する出来事を、従事者になるべく体験させないような職場での工夫が、彼らの精神的健康維持に有効であると考えられる。(2)本研究では、より良質の対人援助サービスが提供されるためには従事者が職業生活においてネガティブではなく、よりポジティブな精神的状態であることが必要であると考えている。研究結果よりポジティブな精神的状態と関連していたのはポジティブ職業生活出来事(「職員間の関係」と「自分の仕事に対する役割」)のみであった。よって、対人援助サービスの質の向上という点において、ポジティブ職業生活出来事は着目すべきポイントであると考える。今後は以上の結果についてより詳細な検証を加え、学会などで発表していく予定である。
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