研究概要 |
平成19年度は、縦断的調査に力を入れ,特に次の点を検討した。第一に、各対象者において、目伝的記憶発達過程で重要な時期を特定した上で,経験時の年齢みならず,幼少期から想起時点までに経験した出来事に関する記憶の報告がどう変遷していくのかを,少数の対象者の事例だがそれらの詳細について分析検討した。対象者間で,共通する道筋を経る可能性を見出すことができた。幼児期初期の「語り」は明らかに幼児期後期以降になると変わてくる様子が確認され,表面的な言語表出力にもっぱら依存した語りから、自伝的記憶としての語りへと,幼児期後期以降に変わっていく可能性が示唆された。時期に個人差があるとはいえ,男児と女児の事例間でもこれまでのところ,この道筋に差異はないものと判断される状況である。第二に,従来の本研究者の研究では,口頭による自由インタビューでの調査者と対象者のやりとりから,主に正誤に重点をおいて分析してきたが,経験数,繰り返し報告数や家でのビデオ視聴なども考慮し,報告する中での変遷過程にも目を向けた分析に取り組み始めた。また,これらの対象者に対し,口頭のインタビューのみならず,過去の記憶に関する質問紙調査も実施し,筆記で答えた内容の収集に取り組んだ。上記の成果の一部については国内外の学会で発表した(Uehara, 2007; 上原,2008)。 生涯発達の視点から,幼少期,児童期の語り口の差異や記憶内容が変容する場合の詳細の過程について十分に検討できなかったので、今後の課題として検討していきたい。
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