テナガザル類を対象とした実験であるが、研究環境の問題、また、他の旧世界ザルの情報も不可欠なため、ニホンザルとキャンベルズモンキーという旧世界ザルにおいて、協和音不協和音に対する選好性を検討した。方法は、サルの体の場所を指標として、飼育室の左右のどちらかに定位すると刺激が提示される、聴覚的な強制選択選好法を用いて検討した。まず、ベースライン条件として、白色雑音で過剰な騒音レベルの聴覚刺激と、通常起こりえる騒音レベルの対刺激を用いて、選好反応を調べた。その結果、過剰なレベルでの白色雑音環境を避けるような反応が現れ、実験パラダイムの有用性が確認された。次に、協和音に対する反応を調べた。実験の結果、旧世界ザルにおいては協和音に対する選好性は認められず、選好性はほぼ位置偏向となった。さらに、種特異的な音声と未知のサルの音声を対刺激として検討を重ねた。特に大きな差は得られなかった。また、他の条件に関しても検討を重ねて現在論文として結果をまとめている。ニホンザルにおける実験も遂行し、同種他個体の時の音声に音源定位の方法が異なることを見出し、共同研究として論文を刊行した。テナガザルに関しても現在同様の実験をすすめ現在解析を行っている。刺激収集の仮定で行った、行動観察において、未成熟個体が歌を獲得する過程の重要な証拠も得られ、現在論文としてまとめている。
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