我々は、日常的に数多くの視覚情報に囲まれて生活しており、必要に応じて視覚情報を記憶する。本研究は、物体の視覚性ワーキングメモリーの保持に関わる神経基盤を、事象関連型の脳機能イメージング(fMRI)により検討することを目的とした。平成20年度は、位置情報の更新を必要としない状況におけるワーキングメモリー保持期間の脳内ネットワークのモデル化と位置情報の動的な更新を必要とする状況でのワーキングメモリー保持期間の脳活動を明らかにすることを目的とした。多物体恒常性追跡課題を改変し、複数の属性からなる物体を用いた変化検出課題において、実験協力者は、予め指示された注目すべき変化に基づいて、視覚刺激の変化を見つけた際にボタンを押して答えるよう求められた。位置情報の更新を必要としない状況における保持については、平成19年度の実験結果と同様、表象タイプによって異なる処理システムを用いて情報処理を行っている脳内ネットワークが示唆された。一方、位置情報の更新を必要とする状況では、平成19年度に行った位置情報の更新を必要としない状況と比較すると、fMRIでの脳活動計測前の練習、fMRIでの脳活動計測中ともに正答率がかなり低く、記憶表象タイプにより脳活動に差がみられるものの、課題の難易度を反映している可能性が示唆された。今後、位置情報の更新の有無で課題の難易度が類似する課題を設定して検討する必要があると考えられる。
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