1.国立国会図書館、国立中央図書館台湾分館(台北)、台湾大学附属図書館(台北)等で、法令集や例規類纂等の調査を行い、1930年代以降の台湾総督府の先住民に対する就学政策に関する基礎的な法令の調査・整理を重点的に進めた。総督府としての就学督励策の限定性や矛盾を示唆する資料が確認できており、今後さらに丁寧な整理・分析を通じて、既往の通説的把握を捉え返す手がかりが得られるはずである。 2.東北大学附属図書館、東京大学史料編纂所、帯広市立図書館等で、元台湾総督府関係者の個人文書や内地小学校教員の視察記録の閲覧・整理を進め、断片的ではあるが、統計上の数値としては現れにくい就学実態を窺う資料を得ることができた。また、国内外の他の諸機関には所蔵していない公的文書や学校文書等が含まれていることも確認できた。これらの資料を整理・検討していくことは、既往の研究の多くが依拠してきた総督府統計や雑誌上の言説を相互批判的に読み解いていくうえで有意義である。 3.日本国内で元台湾総督府関係者の遺族に聴き取り調査を行い、個人文書・写真の閲覧を行うとともに、日常的な職務等に関する情報を収集し、職員同士の公私にわたる関係や内地でのつながりなど、公的な記録には残りにくい実態を明らかにするうえで有用な知見が得られた。 4.本年度は研究補助として院生等の協力を得て資料目録のデータベース化を進める予定であったが、技術上の問題から研究補助は採用せず、資料整理と併行してデータベース化に向けた入力作業を進めた。 5.以上の成果の一部は、これまでの調査研究の蓄積とともにとりまとめて、単著『日本植民地下の台湾先住民教育史』(北海道大学出版会、2008年)として刊行した。
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