(1) 本年度の研究実施計画に基づき、国立国会図書館、国立中央図書館台湾分館(台北)、台湾大学附属図書館(台北)等で、資料調査を行った。 (2) 加除式の警察法規集や地方庁の例規類纂の調査・閲覧を行い、所蔵機関ごとの異同の確認を進めた。新たに確認された訓令・通牒類のうち、1930年代以降の台湾総督府の先住民政策、とくに治安、教育、衛生、移住に関わるものについて細目一覧を作成し、これまでの調査結果に追補を行った。また、主要な資料についてテキスト化を進めた。 (3) 1930年代から40年代初頭における教育所の開廃状況について、総督府刊行物、新聞雑誌記事、回想録、地方誌・郷史等の調査を進めた。新たに得られた資料およびこれまで収集してきた資料をもとに、全島の教育所の開廃状況およびその経緯を可能な限り網羅した一覧を作成した。この結果、当該時期を通じて教育所設置総数に顕著な変動はないものの、各地で統廃合・移転・新設がして進行していること、これと不可分に居住地や生活環境の変化が進行していること等が明らかになった。 (4) これらの調査結果は、1930年代以降の教育所就学者の動向や教育実態について、もっぱら霧社事件後の総督府による先住民教化策の「強化」「徹底」という視点で捉えがちであった既往の研究に、新たな知見を加えるものである。 (5) 以上の成果の一部は、教育史学会第52回大会 (青山学院大学) において報告した。また、これを論文にとりまとめて学術誌に投稿する準備を進めている。
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