今年度の研究計画にもとづき、資料の分析を進めて成果のとりまとめを行うとともに、台湾(中央図書館台湾分館、台湾大学法社分館ほか)および東京(国立国会図書館ほか)にて補足的な資料調査を行い、基礎資料の共有化に向けて準備を進めた。 主な実績は次のとおり。1.「教育所ニ於ケル教育標準」下(1928~1942年)の先住民教育の動態について、教育所の開廃状況、就学状況、為政者および先住民の思惑等を分析し、同時期の台湾先住民政策に関する通説的な把握の再吟味を行った。得られた知見は論文にまとめ、学術誌に掲載予定である(印刷中)。2.霧社事件に関する既往の蓄積の検討を通じて、「事件」をめぐる歴史叙述・歴史認識の深化の可能性を探るとともに、霧社事件をひとつの結節点としてどのような問題・課題が浮かび上がってくるのかを検討した。その成果は、日本台湾学会の全体シンポジウム「台湾原住民族にとっての霧社事件」において報告した後、論文としてとりまとめ、『日本台湾学会報』に掲載予定である(印刷中)。3.台湾先住民族の歴史に関わって例外的に関心を集めてきた霧社事件について、関連文献の目録作成を進めた。本年度は、戦後に刊行された書籍および論文に重点をおいてデータの収集・整理を図り、約550件(日文約300件、中文約230件、欧文約20件)の書誌データをとりまとめた。この目録は、研究誌に掲載したうえで(印刷中)、ウェブ上で公開し、既往の蓄積と課題を広く共有していくための研究基盤形成の一環とする。
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