関一(1873-1935、元大阪市長)の公立大学論の二大構成要素である都市政策論と大学論の形成過程を明らかにし、両者が統合される必然性を解明するための基礎作業として、(1)彼の在学・在職時代の東京高商時代における商業教育改革論に関する文献資料の収集と整理、(2)都市政策論に関する著作・論文の収集と論点整理、を行った。 (1)の作業は、同時代の商業教育改革論、商科大学必要論を示すものとして、『同窓会会誌』『一橋会雑誌』『本学学生調査報告』(一橋大学附属図書館所蔵)などを、また、これらに含まれるもの以外の関の著として、「Anmelds Buch」「旅日記」(大阪市史編纂所所蔵)を収集・整理した。(2)の作業は、『商業経済政策』をはじめとする著作群を整理し、これらに関する先行研究の論点整理を行った。また、関連する作業として、大阪市立大学大学史資料室において大阪商科大学の設立経緯に関する資料収集を行った。 1890年代末から1900年代にかけての商業教育改革論を、留学中のケルン商科大学などについての見聞に刺激を受けた関ら少壮留学生がリードしたことは先行研究において指摘されてきた。しかしながら、そのことの意義は商業教育改革、商科大学必要論の枠内にとどまるものではないと考えられる。高等教育論と都市政策論が、中央集権的な大学体制に対する批判=公立大学必要論として結実したことを理論的、実証的に解明することには大きな学術的意義がある。
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