最初に、本研究課題の中心的な資料となる、平塚直治関係資料54点(個人所蔵)のマイクロカメラ撮影を行なって、受講ノート解読等に際して資料利用が可能な複写を作成した。同資料中26点を占める講義受講ノートの内、北海道農業の形成と定着を重要課題とした札幌農学校において、最も重視された学科であった園芸学・牧畜学関係学科、平塚が専攻した植物学関係学科の受講ノート解読を進めた。この他、平塚在学時のカリキュラム・講義レポート・修学旅行記・研究報文等の学業記録を、札幌農学校簿書(大学文書館所蔵)、『札幌農学校一覧』、学友会雑誌『恵林』『学芸会雑誌』(以上、附属図書館所蔵)などを調査してリストアップした。これらは、本研究課題が取り上げる札幌農学校第14期生平塚直治(予科1888-1892、農学科1892-96年、研究生1896年)の学業に関する全記録であり、札幌農学校の教育が確立していく時期の特徴を具体的に示す資料である。 さらに、平塚在学時と他の時期の比較を行なうために、学内外の諸機関が所蔵する札幌農学校生の講義受講ノートを探索してリストを作成した。学内には、廣井勇(1881年卒)7点、南鷹次郎(1881年卒)10点、新渡戸稲造(1881年卒)2点、宮部金吾(1881年卒)2点、伊吹鎗造(1882年卒)16点、高岡熊雄(1895年卒)68点、星野勇三(1901年卒)1点、半澤洵(1901年卒)1点、川嶋一郎(1906年卒)14点、逢坂信〓(1908年)13点、西田藤次(1899年卒)32点を確認した。学外には、北海道開拓記念館、北海道札幌南高等学校(以上、札幌市)、北海道立図書館(江別市)、津和野町郷土館(島根県)が札幌農学校生の講義受講ノートを所蔵していることを確認した。
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