本研究の中心的資料となる札幌農学校第14期生平塚直治の受講ノート28冊のうち、2冊分に当たる南鷹次郎講義「園芸学」前半部分(園芸総論と蔬菜栽培法)の翻刻を行なった。平塚の受講ノートは、同時期の他の学生・生徒のノートに比して非常に情報量が多く質も高い、札幌農学校における講義内容を極めて詳細に記録した学業記録である。南鷹次郎は札幌農学校第2期性としてW. P. ブルックスら札幌農学校初期の外国人教師から教えを受けて卒業した後、農学校教員となり、農学校のカリキュラムの中心である農学関係講義を担当した。札幌農学校において、初期の外国人教師が教授した最先端の西洋学問を、どのように継承・改訂して日本及び北海道に適合的な農学講義を構成したかを検討する有意な資料である。 また、学外の機関等が所蔵する受講ノートの調査を行ない、重要なものについては写真複製を作成した。特に津和野町教育委員会所蔵の高岡直吉(第3期生)の受講ノート19冊はすべて農学校初期の外国人教師の講義を記録したものであり、平塚の受講ノートと対比して、札幌農学校の講義内容の変遷を検討する最適の資料である これらの受講ノート調査を踏まえ、大学文書館が所蔵する札幌農学校生の受講ノート276冊(複製を含む)について、受講者・講義者・講義名・受講者・講義年代を調査し、目録を作成した。併せて受講者(札幌農学校生)の講義履修表を作成した。目録作成により、これまで詳細には明らかにされていなかった札幌農学校のカリキュラムや担当教員の変遷等が明確となり、札幌農学校生の学業活動の基盤となった農学校の教育プログラムを具体的に検討することが可能となった。
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