昨年度に引き続き、札幌農学校第14期生平塚直治の受講ノートのうち、南鷹次郎講義「園芸学」の後半部分(果樹栽培法)の翻刻を行なった。南鷹次郎の「園芸学」講義は、西洋最先端の農学を軸として、北海道及び日本に適合的な農業技術を加味した構成がなされていた。札幌農学校卒業生には、北海道をはじめ本州以南・樺太・台湾・朝鮮半島・中国大陸等において農場や農事試験場の技術者や、官公庁で農政を担当する者が多く、彼らが拠り所とした札幌農学校の教育内容の一端を明らかにできた。 翻刻の解題として、上記の観点から南の「園芸学」講義について考察を行なった。また、『札幌農学校一覧』等により札幌農学校本科卒業生398名の名簿を作成すると共に、農学部図書室所蔵の札幌農学校生卒業論文の悉皆調査を行ない、翻刻の参考資料として、氏名・卒業期・卒業年・実科演習(専攻学科)・卒業論文題目を項目とする「札幌農学校本科卒業生一覧」を作成した。さらに、「札幌農学校簿書」(北海道大学大学文書館所蔵)と『札幌農学校一覧』の調査により、札幌農学校全期にわたる予科・本科のカリキュラム表を作成した。以上により、札幌農学校生全員について、農学校で学んだ学科、専攻学科、専攻したテーマ等を明らかにすることができた。今後、札幌農学校が強く関与した北海道・樺太・台湾等の農政の展開と、札幌農学校の研究・教育との関連について考察する際の基礎資料となる。 以上の調査は、大学文書館と附属図書館の共催で行なった展示「札幌農学校生の学生生活(1)」(2009年10月30日~2010年2月15日)、「同(2)」(2010年2月16日~5月15日)にも反映させ、学生・教職員や学外からの来学者に対しても、本研究の成果の一部として紹介を行なった。
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