1 学習過程と自己形成過程の関わりに関する縦断的な事例研究 ある一人の生徒の卒業研究過程に対する継続的インタビュー(2001年から2003年:計8回)のテープをおこし、事例の分析を行った。また、その生徒に対する5年後からの回顧インタビューを平成19年11月1に行った。学校外で当事者に出会ったことが、学習過程で動機の大きな変化に繋がり、その影響は社会人になってからも継続し学習が自己形成に関わる可能性が見出された。(分析結果に関しては2008年教育心理学会第50回総会で報告を予定している)また、他の実線に対する分析として、千葉県立小金高校の『総合学習・環境学』に対する回顧インタビューの事例研究を「卒業生にとっての高校総合学習の意味(2)-自己形成と総合学習の接点」(第18回日本カリキュラム学会 2007年)で報告した。 2 高校総合学習の背景分析: (1) 日仏の高校総合学習の比較 (2) 日本の戦後の歴史的変遷の分析 また、事例分析の背景として、二つの分析を行った。(1) 哲学教育と国民的な議論に根ざしたフランスの総合学習と日本の総合学習の性質と内容を比較した。(2) 「戦後の高等学校における総合学習の歴史的変遷-青年期の「学び」の回復としての試み-」(中央学院大学社会システム研究所紀要、2008)として、戦後を、第1期(1948-1975):新制高校の誕生と進学率の拡大、第2期(1975-1990):学びの問い直しと総合学習の現れ、第3期(1991-2002):高校の多様化と総合学習の新たな展開、第4期(2003-):「総合的な学習の時間」の導入と低迷の4期 に分けてまとめを行った。日本の高校の総合学習が、高校政策の影響を強く受けていること、しかし、大学入試選抜の色彩が強い中で、一環して学びの回復としての意味を持っていたことを論じた。
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