本年度は2つの研究課題を設定して研究を進めたが、次のような成果を得ることができた。 研究課題Iは、(1)外国人児童生徒教育に携わる教員が必要とする指導力とその形成過程についてモデル化を行うこと、(2)モデルを踏まえて現職教員対象の研修教材の開発を試みること、であった。(1)については、平成19~20年度に実施した教員調査のデータ分析によって、外国人児童生徒教育に携わる教員に求められる指導力の中身は、その多くが教員一般に必要とされる指導力と重なること、外国人児童生徒の指導ゆえに特別に求められる知識や技術等は、日本語指導に関する多少の知識等に限られること、などを明らかにした。また、指導力の形成過程については、1つの仮説的なパターンをモデル化して示すことができた。(2)については、第一段階として、自学用教材として外国人児童生徒教育に関するテキスト(手引書)の作成を行った。 研究課題IIは、外国人児童生徒教育において教員間の連携と全校的取り組み、学校間連携が成立するための諸条件の検討を行うことであった。これについては、学校の指導体制の実態に関する情報収集のために、複数の小・中学校を横断的に参観調査した。学校種や外国人児童生徒の在籍状況等、指導体制の相違をもたらす要因のいくつかを抽出することはできたが、教員間や学校間の連携を促すシステムの成立要件を検討するためには、引き続き詳細な学校データの収集が不可欠であることもわかった。この点は、次年度の課題とする予定である。
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