本年度は2つの研究課題を設定して研究を進めたが、次のような成果を得ることができた。 研究課題Iについては、平成21年度の研究成果をふまえ、外国人児童生徒に携わる教員に求められる指導力のモデルに基づき、指導力向上に資する研修教材の開発を行った。平成21年度は教員の自学用教材の開発を行ったが、本年度(平成22年度)は、2つの自治体と協力して、それぞれ校内研修用教材の開発を行った。校内研修用教材とすることにより、教員個々人のみならず学校全体としての指導力の向上を意図した。開発した教材は自治体のウェブサイトで公開し、広く活用可能となるようにした。 研究課題IIについては、外国人児童生徒教育の効果的な指導体制づくりの方法を、校内研修の充実を1つの手がかりとして検討した。特に、(日本語指導教室で日本語指導担当教員が行う取り出し指導ではなく、)学級担任が日常行う学級経営や学習指導の場面において、学級担任が継続的に実施可能な取り組みの共有を意図した校内研修のあり方を検討した。その結果、JSLカリキュラムを活用した「わかりやすい授業づくり」をめざした校内研修が一定の効果を有することを確認した。そして、授業改善からはじまる学校組織改善の1つのモデルを明らかにした。 本研究では、課題研究I・IIともに、主に小学校を事例として研究を進めてきたが、特に外国人児童生徒教育の効果的な指導体制づくりにおいては、小学校と中学校ではその方法が大きく異なることを確認した。学級担任制の小学校と教科担任制の中学校における効果的な指導体制づくりの方法の相違についての検討は、今後の研究課題とする予定である。
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