本研究の目的は、カリキュラム開発と教材開発を不可分のものと捉える視点に立ち、戦後初期の日本の地方公立小・中学校、特にこれまで検討されてこなかった東北地方の実践現場で展開されたカリキュラム開発の実態を調査し、教師や学校主体によるカリキュラム開発や教材開発の開発を促し、支えた諸要因を解明することにある。当時、現場のカリキュラム開発と教材開発へ示唆を与えたものとして特に注目するのは、戦後初期に占領軍により教材開発の資料として全国各地方に提供された「教育課程文庫」である。本年度は主として秋田県の戦後教育実践に関する資料調査と、秋田大学に所蔵されている「教育課程文庫」に関する調査を行った。秋田県総合教育センター図書室に保存されている学校文書等を中心とした資料の調査を行った結果、占領下、軍政部が秋田県下の公立小学校長宛に東北大に保存されている「教育課程文庫」の使用を促す目的で発行した通達文書が存在していた。地方の学校現場にも「教育課程文庫」が利用されていた可能性を示す証拠として注目される。しかし、なぜ秋田県の公立小学校に対して、既設置済みの秋田大の「教育課程文庫」ではなく、東北大の同文庫を使用するように指導したのか、それに関する資料は発見できなかった。秋田大と東北大に設置された「教育課程文庫」の所蔵文献の内容(想定利用対象者)に違いがあったことも想定される。そこで、次年度は東北地方の公立学校教師による「教育課程文庫」利用に関する調査を進めることを新たな課題として進めるとともに、2大学のみならず、全国各地の「教育課程文庫」の所蔵文献内容の調査も平行して進めて行きたい。この調査により、地方の公立小学校の教師達のカリキュラム・教科書作成への影響の一端が明らかになると考えられる。
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