本研究の目的は18世紀の都市化において重要な役割を担った都市エリートが社会における責任と役割をどのように考え、それが教育にどのように影響したのかを考察することである。具体的には市民たることを教える教育と職業教育の関係と着目し、都市エリートを数多く輩出したウォリントン・アカデミーにおけるそれぞれの教育の内容や位置づけを明らかにする。 本年度は、まず国内外の関連文献を広くリストアップし、その一部を収集、整理した。イギリスでは18世紀イングランド教育や科学、知的協会に関する文献を中心的に収集すると共に、ウォリントン・アカデミーの後身であるオックスフォード大学のハリス・マンチェスター・カレッジの図書室で18世紀のユニテリアン、都市エリートに関する一次史料を調査、収集した。それらの文献をもとに、ルナ協会に集ったメンバー、中でもウォリントン・アカデミーで長男ジョンを学ばせたジョサイア・ウェッジウッドに注目し、彼が子どもの教育をどのように考え、行っていたのかを分析し、その結果を社会思想史学会のセッションHで報告した。同時に、18世紀都市に関する文献を収集、整理し、18世紀都市住民が社会の変化とに柔軟に対応しながら新しい社会システムを作り出していったこと、都市化が農村と都市を切り離すものではなく、むしろ農村と都市をつなぐ機能を充実させていったことなどを理解した。 また、現在、世界各国で行われている「シティズンシップ教育」の理念と実態について、イギリスを中心に文献収集を行い、整理した。
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