本研究は、中国における性教育について検討することを通じて、日本の性教育への示唆を得ることを目的としている。この目的に基づき、平成19年度から平成20年度にかけて資料および情報収集することを中心に研究を進めた。平成21年度については、これまで収集した資料をもとに、とりわけ理科における性に関する領域の扱いに注目してまとめた。 平成21年度の成果としては、まず、平成20年度に執筆した、中国中央教育研究所と京都大学大学院教育学研究科を中心とした日中共同著作『21世紀的日本教育改革:中日學者的視鮎』が平成21年12月に刊行されたことがある。ここでは、子どもたちの健康と安全を守るという観点から、学校保健の歴史についてまとめた。次に、性にかかわる分野を扱う理科について、中国における「生物課程標準」と、日本における「中学校学習指導要領」に示された目標と内容を比較した。生殖と遺伝について扱う内容については、日本と中国とでそれほど大きな差はなかったものの、中国においては、生殖や遺伝にかかわる知識を身につけるだけではなく、健康的な生活をすごし、出産や育児といった将来遭遇するであろう出来事に対する心構えを身につけることも示されていたことが特徴的であった。
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