本研究は、20世紀初頭に生起・展開した新教育の思想を対象として、さまざまな社会集団によるその領有の仕方を比較教育文化史的に考察したものである。この考察を通して、新教育の思想は概して、(1)(時代を問わず)現行の教育を批判・改善する手がかり、(2)20世紀の教育文化を批判する手がかり、(3)近代教育の思考的枠組みを批判する手がかり、として読まれる傾向にあることが明らかとなった。また、教育実践者は(1)か(2)、教育学研究者は(3)か(2)の文脈で読むことが多い。今日、(1)~(3)の読みが同時並行的に実践されているが、(1)と(3)との間では内容的にも読者(集団)間でも対話的な交流があまり見られない。(1)と(3)のこのズレにいかに対応するかが今後の教育思想史研究の課題だといえよう。
|