研究概要 |
本年度の研究では, 前年度で設定した分析視点・方法に基づき, まずわが国の現状を中心に, 喫緊の課題である公立小中学校の学校再編・学校統廃合問題を検討した。特に, 都道府県から市町村に対する諸政策を通じた支援や影響力行使(政策的コントロール)の様相に着目し, ある県の事例を通じてその現状と課題について考察した。 学校統廃合を含む地域教育の現状を捉えたとき, 教育の「公共性」が実質的に地方教育委員会の特に事務局職員によって担われざるをえない実態・可能性等を視野に入れ, それが最も先鋭的に現れる政策過程例の一つとして学校統廃合問題を位置づけ, 地方の困窮状況や統廃合に関する取り組み状況について分析・検討を行った。その上で, 学校統廃合をめぐる政策的コントロールの具体的課題として, 「教育特定財源」の可能性を模索すること, 学級編制等の基準の適用可能範域を設定すること, 「義務教育学校」「初等教育学校」構想(小中一貫教育)に基づいて初等または中等教育の空白地域の出現を最小限に食い止めること, 「学校統合加配」教員や統廃合担当「ワンストップサービス」等の創設を検討すること等を挙げている。また, 無計画・無規制な学校統廃合が進む現状に歯止めをかけるため, 国にも, 適切化に向けた手引き書・データベース作成, 専門窓口の設置等の役割遂行が強く求められることを指摘した。他方, 米国の状況についてはJoe Nathan氏(Minnesota大学)からの情報提供・研究助言を受け, 現在全米の諸地域で進行中のSmall Schoolの取り組みおよび学校施設の合築施策の展開について調査を開始したところである。以上の経過・成果については, 学会における報告および学術図書の単著論文として発表を行った。
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