教育財政システムにおいて学校予算配分の範囲が拡大する方向性での改革が、分権は、財政配分の透明性、学校間資源配分基準の平等性などの実現に際して、SBMやSBFの先進地域である北米のみならず、中央集権型の教育財政システムを持つイギリス、地方分権型のスウェーデンにおいて、一定の成果をもたらしてきた、もしくは改善されるべき課題の存在を明らかにしてきた。 この点は、これまでアメリカ中心であった日本の学校予算配分に関する研究動向に対し、ヨーロッパモデルの重要性を主張するという意味でおおきな意義をもつ。 また学校分権の進展の条件として、国の義務教育費算定機能や、監査・評価権限も重要であることが指摘できる。中央集権型教育財政システムを採用しているイギリスの場合、義務教育費の算定・配分権限を国が担っている。また地方分権型教育財政システムであるスウェーデンの場合、地方間の義務教育費の格差や学校間の格差に対し、国の監査機能が平等性確保のための一定の役割を果たしている。学校への権限委譲が、放任主義的な規制緩和策の一環として行われるならば、学校分権は学校間の格差拡大の手段でしかなくなる。社会経済格差、地域格差の拡大が懸念されている日本社会において、義務教育の教育パフォーマンスを向上させつつ平等性を追求する権限は、国が有するべきであると考えられる。この際に、地方分権型の教育行財政構造を有する日本においては、スウェーデンのように監査機能の向上が有力なものとなりうる可能性が高い。
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