研究課題
保幼小の連携の必要性が指摘され、園と小学校の相互訪問、保育者・教師間の交流は進められているが、学びの連続性を図る系統的なカリキュラムの検討やなだらかな教育方法へと改善する試みは不十分である。本研究では遊び場面を分析し、小学校教育との連続性を検討し、保育実践における保育者の判断のあり方(実践の根拠)を検討し、援助の構造化を図ることによる遊びの援助における保育者の専門性を検討することを目的とした。本年度は、協力園・保育関連専門組織において研修等を行い、遊びの記録を元にした研修、保育計画と実践後の記録の作成と検討等を行った。結果、遊びの援助においては人間関係形成能力の育成に重きを置かれていることや、保育者が好きな遊び場面から抽出した「学び」の要素も人間関係にかかわる気持ちの育ちに関するものが多く、具体的知識や技術に対する見通しが少ないことが分かった。また、ねらいとその達成を評価する観点を計画の時点から十分に意識する必要性や、環境構成や援助との関係性を構造的に考える必要性が明らかになった。さらには、養成校の教育内容についてヒアリング調査を実施した。結果、好きな遊びの場面の理解を促すビデオや実践観察が養成教育の一環として実施されていたが、好きな遊びの場面にどのように援助するのかを想定した授業内容はなかった。課程論、方法論、各領保育領域の内容・指導法の授業においても、設定保育における環境構成や部分指導案の作成がなされていたが、領域が教科教育科目であるにもかかわらず、要領や指針を扱っていない養成校も若干あることが課題として明らかになった。本研究を通じて、遊びの援助において気持ちの育ちにのみに焦点があてられては、その教育内容が曖昧となってしまう課題が示唆された。小学校以降の教育内容を保育者が熟知し、それへの見通しを図りながら、教育方法における独自性すなわち、相互作用から子どもの主体性を尊重し、子どもの遊びの中の学びをみとり、保育を構成し、遊びをつなぎ、学びを深めることが、保育者に期待される方法と技術であることが示唆された。
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Early Child Development and Care
巻: Vol.18 No.1-2 ページ: 181-187