本調査研究の目的は、1920年から1930年代前半を中心とした、沖縄の小学校における郷土教育の思想と実践について実証的に解明することである。具体的に解明すべき課題として以下の三点を設定した。 1 沖縄での郷土教育にかかわる各学校での実践の内容や組織について、教材に着目しつつ個別的に解明する。各地域・学校において郷土教育実践がきわめて多様に展開されていたことが推測できる。各学校作成の郷土教育の教材について、本研究ではその総目録を作成し、個別的な史料的検討を加えたうえで、解題を付す。 2 沖縄県庁や沖縄教育会による郷土教育あるいは郷土研究への関与について、教育会誌『沖縄教育』を中心的な素材としてあきらかにする。 3 沖縄における郷土教育実践の基盤とされた、郷土研究や郷土誌の刊行に関して、その体系的な目録化を実施する。対象時期における郷土研究および郷土誌の刊行状況に関する史料を収載した目録についての調査にとくに意を注ぐ。 本研究の計画段階では、課題1より順次、進行させる構想であったが、調査研究の第一年度においては、2にかかわる史料調査を先行させた。史実の把握において課題2の『沖縄教育』誌が要となるためである。課題2をほぼ完了させることが出来たことをうけて、第二年度に相当する本年度は、以上のうち1および3にかかわる基礎的な調査に充当した。すなわち、沖縄県立図書館、石垣市立図書館をはじめとする諸機関において、複数回にわたる史料調査を実施した。他方、郷土教育実践を主題とした本研究の副産物として、1930年代の八重山における教員運動史における「郷土」の位置付けを主題とした論稿を編著として公表した。
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