本年度は、以下の2点についての調査研究を実施した。 1.信仰学校の設置過程の調査・研究 イングランドにおける信仰学校と教育の公共性の関係を研究する一つのアプローチとして、特定宗派の利益を代表する信仰学校が公費による維持を認められるプロセスを検討した。この研究の成果を日本教育行政学会第42回大会で発表した。 2.信仰学校の実態調査 信仰学校が公費で維持されることに対してはさまざまな議論がある。イングランドの教育関係者の信仰学校に対する見解ならびに信仰学校の実際の様子を知るために現地調査を実施した。具体的には以下の通りである。 (1)リーズ市における調査 リーズ大学教育学部上級講師ニール・バートンウッドへのインタビュー調査を行い、教育学における信仰学校研究の状況について解説を受けた。また、アビー・グランジ国教会中等学校への訪問ならびにキャロル・キッソン副校長へのインタビュー調査を行い、国教会学校の特徴について説明を受けた。 (2)ロンドン、ワンズワース区における調査 信仰学校に対する教育行政官の見解を知るために、ワンズワース区教育長ポール・ロビンソンへのインタビュー調査を行った。また、非宗教の中等学校と比較するために、チェスナット・グローブ中等学校への訪問ならびにマーガレット・ピーコック校長へのインタビュー調査を行った。 (3)サリー州における調査 カトリック学校であるセント・ジョン・バプティスト中等学校を訪問し、宗教教育の授業を視察した。また、ジェイミー・ヘイゼルデン宗教教育主任へのインタビュー調査を行い、カトリック学校が公費で維持されることの意義について話をうかがった。 今後は、上記の調査結果を基に、信仰学校観ならびに信仰学校の教育活動の分析を進め、教育の公共性の観点から信仰学校の特質を明確にする。
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