研究概要 |
教育現場では学ぶ意欲と学ぶ能力の育成を目指して新しい教育手法が導入され始めているが,新しい教育手法による学習形態の実践は,その特性や学習過程におよぼす影響についての正確な理解がなければ,学習者の特性とのミスマッチを導きかねない。そこで,本研究では,大学生を対象に,学習形態の特性と利点を明確にすることによって,学習活動をより効果的に進めていくための指針を提供することを目指している。平成19年度には次のような研究成果が得られた。 A. e-learning型学習においては,学習過程における動機づけの変化や,学習形態への適応の程度,およびそれらに影響を及ぼす要因について検討することを目的に,調査対象と調査項目の選定を行った。平成20年度はこれらを基盤に調査を実施する。 B.講義型学習においては,動機づけと自己効力感が学習方略に及ぼす影響について検討した。その結果,学習すること自体を目的としている学生は自己効力感の高低に関わらず,適応的な学習方略を適用するのに対して,学習を別の目的の達成のための手段と考えている学生は,自己効力感の知覚が学習方略の使用に影響する傾向があることが明らかとなった。 C.プロジェクト型学習においては,学業成績の単位とは無関係のプロジェクト活動に参加している学生を対象に,その動機づけ過程を検討した。その結果,仲間との関係性の構築や自律性支援的な態度が,適応的な行動やウェルビーイングと関連する傾向が見出された。 今後は各学習形態における動機づけ過程のより詳細な検討を進めるとともに,個人特性的要因との関連や学習効果についても検討し,個人の学習効果に学習形態の差異がおよぼす影響を明らかにすることを目指す。
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