研究概要 |
教育現場では学ぶ意欲と学ぶ能力の育成を目指して新しい教育手法が導入され始めているが, 新しい教育手法による学習形態の実践は, その特性や学習過程におよぼす影響についての正確な理解がなければ, 学習者の特性とのミスマッチを導きかねない。そこで, 本研究では, 大学生を対象に, 学習形態の特性と利点を明確にすることによって, 学習活動をより効果的に進めていくための指針を提供することを目指している。平成20年度には次のような研究成果が得られた。 e-Iearning型学習においては, 調査実施に向けて教材開発および実施計画の打ち合わせを行った。学習内容の特質上, 調査は平成21年度の春学期開始時から継続的に実施する。プロジェクト型学習においては, 大学の単位認定がされているプロジェクト科目履修生および単位とは無関係のプロジェクト活動に参加している学生を対象に調査を実施し, プロジェクト型学習に対する動機づけ過程や個人特性的要因との関連について検討した。その結果, 社会的適応や自己実現的な個人特性のある学生のほうが適応的な動機づけ過程を示す傾向が明らかとなり, この結果は学会で報告し, 論文にまとめた。講義型学習においては, 基本的要求の充足が学習動機づけの促進と関連し, さらにそれがウェルビーイングの促進にもつながることが明らかとなった(田中・井内, 2008)。また, 学習すること自体を目的としている学生は自己効力感の高低に関わらず適応的な学習方略を適用するのに対して, 学習を別の目的の達成のための手段と考えている学生は自己効力感の知覚が学習方略の使用に影響する傾向があることが明らかとり, この結果は学会で報告し, 論文にまとめた。 最終年度となる平成21年度は, これまでのデータの分析を継続するとともに, 各学習形態と個人特性的要因との関連や学習効果に特に着目し, 学習者の学習効果に学習形態の差異がおよぼす影響を明らかにすることを目指す。
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