研究概要 |
新しい教育手法による学習形態の実践は,その特性や学習過程におよぼす影響についての正確な理解がなければ,学習者の特性とのミスマッチを導きかねない。本研究では,大学生を対象に,学習形態の特性と利点を明確にすることによって,学習活動をより効果的に進めていくための指針を提供することを目指している。平成21年度には次のような研究成果が得られた。 eラーニング型学習については,短期大学生を対象に学習動機づけとの関連を検討した。結果は分析途中であるが,基本的要求の充足度が高い学生はeラーニングによる学習効果が高い傾向にあることが明らかになると同時に,自律性支援が低いと感じている学生もまた学習効果を高く評価する傾向にあった。 また,個人特性・学習動機づけと学習形態の関連を大学生を対象に調査した結果,学習に自律的に動機づけられている学生は積極的な参加と活動が求められる小規模講義やプロジェクト型学習に魅力を感じるのに対して,外的に動機づけられている学生はeラーニング型学習と相性がよく,大規模講義では集中できない傾向があった。一方,個人特性では,外向性・情緒不安定性・調和性が高い学生は小規模講義を好み,調和性の高い学生はプロジェクト型学習を好む傾向がみられた。つまり,外的で活発な傾向や,知的好奇心が高く,多様性を好む傾向の強い学生,学習すること自体に楽しみや喜びを見出しているような学生は,教員と学生の双方向的な働き掛けが可能な学習形態を好み,そのような学習形態による学習効果を高く評価する傾向があった。一方,学習そのものではなく,他者の評価や将来の高い地位,報酬を目的の学習に動機づけられている学生は,学習の具体的な進行程度や成果が比較的容易にとらえられるeラーニングを好む傾向があった。 これらの結果については,2010年度の学会で発表することが決定し,また論文にまとめ投稿の準備を進めているところである。
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