研究概要 |
理論的研究においては、本研究に関連する領域について国内外の研究を検討した。授業コンサルテーションの「問題意識-計画-実行-評価」の過程において、授業研究や教室談話研究は学校教育システムの社会的、文化的、制度的状況における授業を生きる「実践者」としての教師と子どもの知的実践がはらみうる問題状況を可視化し課題を設定するうえで有用であることが示唆された。また、教師の実践的知識は物語的な知として表出し伝承されうる。そのありようは「授業を想定した教材の知識(pedagogical content knowledge)」(Shulman,1987)だけではなく、そのあり方や運用に影響を及ぼす学校生活のミクロ政治と社会的文脈にまで広げて論じる(グッドソン,2001)ために、教師のライフストーリーとして語られうる、教師の生き方や経験まで含めてとらえていくことの必要性が明らかとなった。さらに、授業研究をより開放的に、教師研究をより多面的にするとともに研究者による実践関与のあり方を再定位する可能性がある反面、実践者と研究者との関係性形成、調査と支援との連続性について課題があることが示された。 予備調査においては、研究協力者となりうる小学校二校、中学校一校に対して、授業観察や聞き取り調査、子どもの学習の実態に関する質問紙調査を実施し、結果のフィードバックを行った。質問紙調査については当該校の全教職員もしくは学校長に対して、子どもの学習の特徴や課題を提示し、改善のための方途を提案した。また、授業観察の結果については当該授業における子どもの授業参加等について提示した後、授業者の教師に対して、授業の過程における意思決定や子どもの看取りのありかたとともに、ライフストーリーについて聞き取りを行った。
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