・理科授業の構造をみていく際の視点を明らかにするための基礎的なデータ収集を行った。首都圏の中学1年生の2学級(33名、35名)において、理科の授業観察をのべ13時間にわたり行った。授業は、上皿天秤の使い方など器具の取り扱いに関する事項、名前を伏せて与えられた無色の気体を様々な方法で調べる活動など第一分野が中心であった。授業はビデオカメラで映像記録を採取した。授業後には授業者にフィードバックを行うとともに聞き取りを行った。教師が子どもの学習や自身の指導について課題と感じていることがらについては、その場で意見を述べ、協議を行った。 ・学校を基盤とした授業コンサルテーションの要件を検討するための取り組みを行った。近畿圏の中学校において、校内研究体制の整備を担当教諭と共同して行った。1年目となる本年度は、既定の校内研究会に参加し、校内研究の特徴や課題を明らかにするとともに、一参加者として授業に対するコメントを述べた。校内研究を活性化させるためには、生徒指導にかかる教師の負担を軽減すること、授業を実施、公開し批評し合うためのモデルケースを提示することが必要であることなどが明らかとなった。 ・理科授業を事例として「子どもの学習参加を促す学習環境の構成」について検討し報告をした。子どもが学習活動に向かおうとするときの特徴は、以下の通りである。(1)教師によって決められた課題であってもアプローチの自己選択が認められる。(2)他者の援助を得て学習活動を進めることが可能である(リソースとしての他者)。(3)小集団における成員性の獲得が保障される。(4)他者の活動が可視化されるように道具(実験器具、材料、言語、規範、目標など)が配置される。(5)動機づけが高まる局面と低減する局面の切り替えが許容される。 ・その他、日本教育心理学会、日本発達心理学会を中心として、授業コンサルテーションや教師の学習に関するシンポジウムに登壇者として参加するとともに情報交換を行った。
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