本年度は、第一に教育改革をキーワードとして、米国における戦後の教育改革、及びミネソタ州における教育改革の流れを整理し、NCLB法と米国の現状について本学学部紀要において発表した。 教育改革のプロセスを概観すると、その方向性を決定する際、必ずしも教育現場を含めた教育の専門家が牽引するわけではなく、知事等の強力なリーダーシップの下で展開されるなど、複雑なファクターが相互に織りあいながら教育改革が展開していることを明らかにした。また、学校選択制度を早期から導入しているミネソタ州における実態を通して、教育の機会享受の観点からすれば、多くの生徒が当該制度の恩恵を受けていることを明らかにした。特に、チャータースクールに関しては、当該制度の有する可能性と危険性についても指摘した。 第二に、ミネソタ州の複数のチャータースクール(CS)やバスル大学等のスポンサー、及び行政当局等を20年3月に訪問し、校長やCS関係者へのインタビュー調査を実施した。CSの実態、スポンサーとの連携実態等について、有益な情報を得ることができた。 特に、事例として扱ってきたPACTチャータースクールのスポンサーであるバスル大学との連携については、インタビュー等に加えて、評価報告書等からも新たな事実を明らかにすることができた。具体的には、教育実習生の教育実習をPACTで行い、そのプロセスで大学教員が関わっていくことや、普段の大学の講義をPACTで行うなど、大学にとっても有益な連携実態が見られた。PACTからすれば、大学教員の専門的な意見を取り込むことができ、教育活動に有益な協力を大学から得ている実態も見られ、双方によって有益な連携協力実態が構築されていることが明らかとなった。
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